取引におけるリスク感覚の重要性について

今回はこれから副業、起業・独立を目指している方を念頭に、取引におけるリスク感覚の重要性という点について書いてみたいと思います。

一般的に取引が成立するときというのは、両者のリスクのバランスがとれた状態である必要があります。

取引が発生する場合にはある程度のリスクをとる覚悟が必要なわけですが、このリスクバランスが取れない場合にはそもそも取引が成立しなかったり、着手をしても結果的にトラブルになってしまう、また、信用を失ってしまうという結果となります。

例えば外壁塗装をお願いする場合を考えてみましょう。

外壁塗装は100万円を超える大きな取引ですから絶対に失敗はしたくないわけですが、カラーサンプルを見せられても素人には実際の出来上がりをイメージすることはなかなかできません。これは依頼者側が抱えるリスクです。

ここで依頼者は最高でないにしても少なくとも”変”な感じにならなければよいと考えているとします。そこで依頼者側が塗装業者に「色のセンスに自信がないのですべてお任せします。いい感じにしてください。」と言うとします。そうなると今度は塗装業者が抱えるリスクが大きくなります。

塗装業者が色を決めるということは結果責任を塗装業者が負わなければなりません。

どんなに任せるとはいっても実際には依頼者が失敗するリスクを全面的に許容する覚悟を持っていないことが大半です。ですから、施工後に”変”だった場合トラブルになるのです。「いい感じにしてくださいと言ったのに全然いい感じじゃない!」というわけです。

ですから塗装業者は色の選択について意思決定をすることはできません。塗装業者にできるのは提案までであって、その提案をもとに最終的には依頼者が意思決定をしてリスクをとらなければならないわけです。

つまり提案というのは専門的な知見のある側が依頼者の負うリスクを低減して意思決定を助けるという意義があります。

そしてこれはウェブサイト制作でも同じことです。

依頼者側としてはウェブサイト制作や運用について専門知識がないためすべて丸投げしたいという場合があります。しかしこの段階で制作に着手してしまうのは両者にとって非常に大きなリスクをはらんでいます。

依頼者側としては期待していたものと全く違うものができあがるリスク、制作者側としては制作したものがイメージと違うということでやり直しを迫られるリスクが出てきます。

ですから制作者側はまず要件を把握して事前にしっかりと仕様を固めた上で両者のリスクを極力低減する提案をすることになります。そしてその提案に対して依頼者側が意思決定(残ったリスクを負う覚悟)をするわけです。

制作者側が適切なディレクションができない場合は要件や仕様が曖昧なまま制作に着手してしまうということになりますが、こういった進め方をするとほとんどの場合トラブルが生じます。

依頼者側の頭の中のイメージと制作者側の頭の中のイメージの擦り合わせができないまま進むのですからそれは当然のことです。

最終的に要件を満たしたものができないためやり直しか中止ということになりますが、予め制作物について承認を得ていないわけですから制作者側が責任を負うしかありません。最終的に要件通りのものができたとしても、赤字の上に顧客満足度はマイナスで終了することになります。

こういうことを積み重ねてゆくと対外的な信用を完全に失ってしまうわけです。失った信用を取り戻すのは大変ですからこれは大きな損失ですよね。

ビジネスにおいて前向きに行動することは重要ですが、それがリスクを把握しないまま突き進むことであってはならないと思います。

潜在的なリスクをとらえ、そのリスクをできるだけ低減する努力をし、その上でリスクをとるという意思決定をしなければなりません。

そうすることではじめて失敗も学びに変わるのだと思います。

盲目に行動してなんとなくうまくいかなかったというのを繰り返しても失敗を学びに変えることは難しいだろうと思います。

ビジネスをしているとどこにでも顔を出すのがこの「リスク」というものです。このリスクの扱い方をしっかり知ることできっとよりよい取引ができるようになるものと思います。

そしてこういったリスク感覚のある人同士の取引は非常にスムーズに進みます。

交渉や調整段階で両者とも、自分が負うリスク、相手が負うリスクを認識しているため、最終的にうまくいかなかった場合にも想定範囲内となります。「こんなはずじゃなかった」「聞いてない」といったトラブルに発展することはありません。

また、お互いにリスクをとってくれた相手に対する敬意の感情というものも生まれるわけです。リスクを前にして決断する姿というのはやはり見ていてかっこいいものですからね。

幸いタドワークスの取引先の経営者様、担当者様にはこういった尊敬できる方が本当に多く、いつも本当によい刺激になりますし、ありがたいことだなあと感じています。

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